好きなものを思いっきり食べて満足感を得るのは、ごく自然なことだと思います。ただ、ある程度、年齢がいってくると、健康診断で脂肪肝のうたがいとか、中性脂肪が高値とか、尿酸が高いとかの”生活習慣病です”と言われるようになると、さて一体どうしたものかと悩んでしまい当院へ受診される方が多いです。その中で特に苦労されている方々が目につくようになってきたので、お話しします。それはグルメと言われる方々です。たとえば腎機能障害が検査で指摘される状態ですと、塩分制限しましょうとか味の薄いものを食べるようにしましょうと食生活での是正を呼び掛ける訳なのですが、それはグルメの方にとっては、人生観を一転させなくてはならない重大問題となる訳です。健康を保持するためには、そうしなくてはならないことは皆、頭の中では理解してはいるのですが、自分の究めてきたグルメ道を外れる訳にはいかないと下を向いてうなだれてしまう訳です。よく理解できます。どこそこの何が美味しいとか、あそこの何がちょっとこんな味であるとか、産地や出荷時期による違いを皆さんそれぞれ独特のグルメ論で展開されます。外来では、なんとも言ってあげられない場面も頻繁に起きます。皆さん、からだに悪いものを食べているつもりはありませんし、食べてきたつもりもありません。皆さんが例外なく想起する複雑な思いは、そのこだわって食べてきたもののせいで健康に害が起きたのではないか？という疑問です。わかっていただきたいのですが、そうであるかもしれないし、そうでないかもしれないということです。もともとの体質がその食事内容と合わなかっただけかもしれませんので御自分を責める必要はありません。過去のことは、現在の状態の原因になっているかどうかはわかりませんので、現在の健康障害についてだけ明らかにして、将来の健康回復の方策を一緒に考えていきませんか？その結果、あなたのグルメ道に反する食餌療法を示されたとしても、否定をしないでください。あなたが究めて来たグルメ道は、あなたがあなたの人生を豊かにするために打ち込んできたもののハズですよね。ならば、今後の人生を楽しく充実したものとし続けるために「これまでになかった健康に配慮した独自のグルメ道」を切り開かれたらいかがでしょうか？現時点ではあなたの趣味や嗜好と食餌療法の方向性が相容れないものであるかもしれませんが、いずれ食に関する科学的発見・発明がなされ、あなたのグルメ道と両立できる食餌療法が確立してくるかもしれません。それまでの間、あなたが健康でいるために、食餌療法だけではなく薬物療法や運動療法についてお手伝いできると思います。どうぞ御来院ください。そしてあなたのグルメ道について蘊蓄（うんちく）を聞かせてください。